2010年06月15日

太宰治「道化の華」

笑顏をつくることは、青年たちにとつて、息を吐き出すのと同じくらゐ容易である。


 彼等は、よく笑ふ。なんでもないことにでも大聲たてて笑ひこける。笑顏をつくることは、青年たちにとつて、息を吐き出すのと同じくらゐ容易である。いつの頃からそんな習性がつき始めたのであらう。笑はなければ損をする。笑ふべきどんな些細な對象をも見落すな。ああ、これこそ貪婪な美食主義のはかない片鱗ではなからうか。けれども悲しいことには、彼等は腹の底から笑へない。笑ひくづれながらも、おのれの姿勢を氣にしてゐる。彼等はまた、よくひとを笑はす。おのれを傷つけてまで、ひとを笑はせたがるのだ。
[初出]『日本浪曼派』昭10年5月号

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posted by 北田信 at 22:48| 道化の華 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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