2008年07月21日

太宰治「女生徒」

素直に思っていることを、そのまま言ってみたら、それは私の耳にも、とっても爽やかに響いて、この二、三年、私が、こんなに、無邪気に、ものをはきはき言えたことは、なかった。


「ああ、いいアンマさんだ。天才ですね」
 お母さんは、れいによって私をからかう。
「そうでしょう? 心がこもっていますからね。でも、あたしの取柄(とりえ)は、アンマ上下(かみしも)、それだけじゃないんですよ。それだけじゃ、心細いわねえ。もっと、いいとこもあるんです」
 素直に思っていることを、そのまま言ってみたら、それは私の耳にも、とっても爽やかに響いて、この二、三年、私が、こんなに、無邪気に、ものをはきはき言えたことは、なかった。自分のぶんを、はっきり知ってあきらめたときに、はじめて、平静な新しい自分が生れて来るのかも知れない、と嬉しく思った。
[初出]『文学界』昭14年4月号

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posted by 北田信 at 13:22| 女生徒 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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