2013年07月26日

太宰治「女の決闘」

人は、念々と動く心の像すべてを真実と見做みなしてはいけません。


男は、あの決闘の時、女房を殺せ! と願いました。と同時に、決闘やめろ! 拳銃からりと投げ出して二人で笑え、と危く叫ぼうとしたのであります。人は、念々と動く心の像すべてを真実と見做みなしてはいけません。自分のものでも無い或る卑しい想念を、自分の生れつきの本性の如く誤って思い込み、悶々している気弱い人が、ずいぶん多い様子であります。卑しい願望が、ちらと胸に浮ぶことは、誰にだってあります。時々刻々、美醜さまざまの想念が、胸に浮んでは消え、浮んでは消えて、そうして人は生きています。
[初出]『月刊文章』昭15年1〜6月号

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posted by 北田信 at 11:37| 女の決闘 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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