2007年06月24日

太宰治「葉」

お前は嘘がうまいから、行いだけでもよくなさい。


 叔母の言う。
「お前はきりょうがわるいから、愛嬌(あいきょう)だけでもよくなさい。お前はからだが弱いから、心だけでもよくなさい。お前は嘘がうまいから、行いだけでもよくなさい。
[初出]『鷭』昭9年春号

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太宰 治
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2007年05月30日

太宰治「葉」

ほんとうに、言葉は短いほどよい。それだけで、信じさせることができるならば。


 兄はこう言った。「小説を、くだらないとは思わぬ。おれには、ただ少しまだるっこいだけである。たった一行の真実を言いたいばかりに百頁の雰囲気をこしらえている。」私は言い憎そうに、考え考えしながら答えた。「ほんとうに、言葉は短いほどよい。それだけで、信じさせることができるならば。
[初出]『鷭』昭9年春号

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2006年10月03日

太宰治「葉」

ねむるようなよいロマンスを一篇だけ書いてみたい。


どうせ死ぬのだ。ねむるようなよいロマンスを一篇だけ書いてみたい。男がそう祈願しはじめたのは、彼の生涯のうちでおそらくは一番うっとうしい時期に於いてであった。男は、あれこれと思いをめぐらし、ついにギリシャの女詩人、サフォに黄金の矢を放った。あわれ、そのかぐわしき才色を今に語り継がれているサフォこそ、この男のもやもやした胸をときめかす唯一の女性であったのである。
 男は、サフォに就いての一二冊の書物をひらき、つぎのようなことがらを知らされた。
 けれどもサフォは美人でなかった。色が黒く歯が出ていた。ファオンと呼ぶ美しい青年に死ぬほど惚(ほ)れた。ファオンには詩が判らなかった。恋の身投をするならば、よし死にきれずとも、そのこがれた胸のおもいが消えうせるという迷信を信じ、リュウカディアの岬から怒濤(どとう)めがけて身をおどらせた。
[初出]『鷭』昭9年春号

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